「源氏物語 明石」(紫式部)

源氏、捲土重来を果たす

「源氏物語 明石」(紫式部)
(阿部秋生校訂)小学館

「源氏物語」小学館

何日も続いた嵐のある夜、
源氏の枕元に父・桐壺院の
霊が現れ、須磨の浦を
立ち去るよう示唆する。
翌朝、やはり夢のお告げを
受けたという明石の入道が
舟で現れ、源氏をぜひとも
明石にお迎えしたいという。
源氏はそれを受け入れ…。

源氏物語第十三帖「明石」。
前帖「須磨」で、
自ら都を下った源氏ですが、
この帖では運命が再び大きく揺れ動き、
ついには捲土重来を果たします。

源氏の運命の転換点その一
霊力を発揮する住吉の神

明石といえば住吉神社です。
かつて神功天皇が
播磨灘で暴風雨にあった際、
当地に滞在し、
住吉大神に平穏を祈願したところ、
風雨はたちどころに納まり、
つつがなきを得たと伝承されるとおり、
かの地において大きな力を
持っていたのは住吉の神なのです。
嵐の日が続いたのも、
源氏の屋敷に落雷したのも、
須磨を離れよという
神の思し召しだったのです。
そして住吉の神は、
もう一人の鍵を握る男・明石の入道をも
動かしていくのです。

源氏の運命の転換点その二
立ち現れる桐壺院の霊

源氏の枕元に立った桐壺院の霊は、
さらには朱雀帝の夢枕にも現れ、
無言のまま睨み付けるのです。
朱雀帝は眼病を患うようになり、
帝を弱腰とたしなめた母・弘徽殿大后も
病に伏せるようになり、さらには
その父・右大臣が薨去してします。
朱雀的は
父の怒りに触れたことに気付き、
最終的には大后の意を無視して
源氏召喚の勅命を発し、
さらに次の「澪標」の帖では
譲位まで決意するのです。
この当時、霊界からの「お告げ」は
これほどまでに大きな影響力を
持っていたのです。

源氏の運命の転換点その三
明石の入道の政治的画策

住吉の神に導かれた
もう一人の男・明石の入道は、
源氏を娘婿にしようと画策します。
この明石の入道、
元々は大臣家の息子で
三位中将まで出世していたのですが、
政治の中枢からあえて身を引き、
国司として播磨の国へ赴任、
任期明け後は出家し、
明石へ居を構えていたのです。
源氏はこの明石の入道の娘・
明石の君と契ることにより、
娘を授かることになるのです。

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すでに源氏には葵の上との子・
夕霧があるのですが(この段階での
東宮もまた源氏の子なのですが、
表向きは桐壺院の子)、
明石の君は
女の子を産むことになります。
この子がやがては東宮妃となり、
外戚関係を得た源氏の政治権力は
さらに強固なものになっていくのです。

運命に翻弄されながらも、
それを乗り越え、人間的に
一回りも二回りも大きくなり、
さらには娘まで授かり、
あたかも凱旋したかのように
都へと上るのです。
物語としては最高の筋書き。
紫式部の作品世界の緻密さと重厚さを
改めて思い知らされます。

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〔前帖〕

〔次帖〕

(2020.4.18)

necoco7さんによる写真ACからの写真

【源氏物語】
01 桐壺
02 帚木
03 空蝉
04 夕顔
05 若紫
06 末摘花
07 紅葉賀
08 花宴
09
10 賢木
11 花散里
12 須磨
13 明石
14 澪標
15 蓬生
16 関屋
17 絵合
18 松風
19 薄雲
20 朝顔
21 少女
22 玉鬘
23 初音
24 胡蝶
25
26 常夏
27 篝火
28 野分
29 行幸
30 藤袴
31 真木柱
32 梅枝
33 藤裏葉
34 若菜上
35 若菜下
36 柏木
37 横笛
38 鈴虫
39 夕霧
40 御法
41
00 雲隠
42 匂兵部卿
43 紅梅
44 竹河
45 橋姫
46 椎本
47 総角
48 早蕨
49 宿木
50 東屋
51 浮舟
52 蜻蛉
53 手習
54 夢浮橋

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